過去の話

過去の話⑥~大切な人の定義~

男と女が恋に落ちる瞬間は、本当に些細な出来事がきっかけになるのかもしれない。

結婚生活が20年以上たっている私は、恋をすることなんてもう2度とないと思っていた。

そんな私が今は裕のことを愛している。

きっかけは私がネットで知り合ったAさんのことを好きになってしまって、どうしたらいいか相談したことが始まりだった。

裕とは恋人関係になる1年以上前から、ネット上で知り合いだった。

ずっと普通の友達だったのに、今はかけがえのない大切な人になっている。

他の男性を好きだった私が…その人のことを想うと涙が止まらなくなってしまうほど、好きだったのに、相談をしているうちに裕のことを好きになっていた…

いつ、どのタイミングで裕のことを好きになったのかはわからない。

でも私のことを真剣に想ってくれる彼に、私の心は完全に奪われていた…

 

 

私は過去にある依存症だった。ギャンブルではない。

Twitterは2つのアカウントを持っていて、1つは依存症の私としてのアカウントだった。

そこで知り合ったギャンブル依存症を克服したAさんのことを、私は好きになってしまった。

Aさんは既婚者だけど、心の中に大切に想っている女性がいた。Aさんにとってはその女性は生きる希望らしい。

私が「好きだよ」と言っても、全く相手にされなかった。

「そんなこと言われても、喜べないな。困るだけだ」と。

でも私がAさんが大切に想っている女性のことを羨ましいって言うと、Aさんは

「雫のことも大切に想ってるよ。恋愛感情抜きでね」と言う。

私はただもてあそばれているだけなのかもしれない。それを裕に言うと

「僕はもちろんその人のことを知らないけど、例えば雫さんのことを大切に想ってるよ、って言えるけど?それとなんか違うんかね?」と答えがきた。

大切な人とか、大切に想ってるって、私は軽はずみで言えないから、男の人って感覚がちょっと違うのかなと思った。

だって「君のことを大切に想ってるよ」なんて言われたら、私はドキッとしてしまう。

ただの友達の延長だなんて思えない。それって特別な感情があるんじゃないの?って勘違いしてしまうよ。

でも裕にとっても「大切に想っている」人はきっとたくさんいるはずだ。

「複数いるうちの1人ってことか…」

この時、そう私は裕に言った。

 

 

今でも裕にとっての「大切な人」は複数いるはずだ。

家族であり、友人であり…

私のことだけを大切に想って欲しいなんて、贅沢なことは言わない。

でもあなたにとっての「1番大切な人」に私はなりたい。

それはね。あなたのことを愛しているから。

私にとって裕が「1番大切な人」であるように、あなたにとっても私が「1番大切な人」でいたいの。

いつまでもね…