2019年11月20日の深夜。
Aさんが死んでしまうかもしれないと思った私は、裕にTwitterのDMを送った。
裕は出張に行ってて、深夜2時近くになってやっと返事がきた。
「もう遅いから明日話すね。1人でテンパっちゃって、ごめんなさい」と私は言った。
裕は「大丈夫?」と言ってきた。
「とりあえず、生きてたから」
「いや、僕が言ってるのは雫さん寝れるかってこと。横にならないと壊れんで?もし寝れないなら付き合うし。寝たいならその方がいい」
眠ることなんてできない私は、話を聞いてもらうことにした。
Aさんがなんで急に家を出たのか。死を匂わすようなことをブログとTwitterに書いたのか。理由はわからない。
でもそれまで毎日LINEをしていた私がLINEをやめてから、急にそうなってしまったので、もしかしたら私にも何か原因があるのかもしれないと勝手に思ってしまった。そしてこれ以上深入りしてもいけないと思った。
裕は「もし仮に、雫さんのことでそんな行動に出てるのなら、めちゃくちゃムカつくんやけど。マジぶん殴るわ」と言う…。
「精神年齢が子供なんだよ。構ってちゃんなのもわかってる。わかってるけど…」
「わかってるけど?」
「無視できない…」
「じゃ会いに行けよ。気になるなら何が起きているのか聞きに行けばいいじゃん。遠まわしすぎるぜ。縁を切りたいのか、解決したいのか、どっちなんや」
「今すぐは縁を切れない。でもいずれかは切る…」
「でも遠くからうじうじ見てても何も変わらんで。結局振り回されるだけや。そういう奴なのは明らかやんけ」
「死ぬことはないかな?」
「は?はっきり言うわ。俺は他人やからな。めちゃくちゃ冷たいで。家庭生活も維持できない。その大切な人ともなんだかよくわからない関係を続けてる。そして雫さんを苦しめてる。そんなクソがどうなっても知らんわ」
いつもは冷静で淡々としている裕が、こんなに怒っているところを見たのは初めてだった。
「あまり怒らないで…。胃が痛い…」
「そりゃ怒るわ。結局誰1人幸せにもできず、周りを振り回しているだけじゃないのか?」
「わかってる。自分のことが1番大切なんだよ。でも私は、生きてて欲しいの。ただそれだけ…。でも私は縁を切るよ」
「でもさ、言っとくけどその病は一生治らへんで?その大切な人と一緒になるまで見届けたいの?」
「離婚するのは3年以上あとだから。子供のことがあるし」
「生きてて欲しいって言うけど、縁切ったらその後どうなるのかもわからんやん?本当に生きてて欲しいのなら、そばにいないとわかりませんぞ」
「ブログを見る」
「じゃ、それなら今すぐできるやん。なんで深入りするの?」
「好きになってしまったから…」
「そうか…」
「でも縁切るよ。必ず。少しだけ時間をください」
「それは雫さん次第。今日の様子を見ていたらまだまだやな」
「私もわかってるよ。本気で好きなことも確信しちゃったし、同時に関わってはいけないことも確信した。気持ちはいつか変わると思う。今すぐ縁を切るんじゃなくて、少しずつ離れていく。最終的にはLINEも削除する」
「わかった。でも、ごめんけど僕のできるのはここまで。僕が言いたいことは全部言ったから、あとは自分の力で頑張るやな」
「不安だけど、頑張ってみる…。裕さん、もう私と話してくれないってこと?」
「そんなわけないやろ…。でも、この件は僕なんかじゃどうしようも出来ないことがわかったしね…。まぁ、でもまだ1週間も経ってないか…。時間かければ治るのかなぁ」
「裕さんがいてくれたから、私頑張ろうと思った。いないと無理かも…」
「・・・・・・・・」
「そんなに、強くないから…」
「はぁ…。俺もどうしよもないお人好しやわ…。これからも雫さんに付き合うよ」
「ごめん…」
「その代わり。本気でやれよ。じゃなきゃ俺も悲しいわ」
「本当にごめんなさい。ちょっと時間をかけてやってみる」
「うん。俺は雫さんの味方やで?責めてるように見えるだろうけど、本気で心配してるからそういう訳」
「ありがとう。本気で怒ってくれて、ありがとう…」
「気悪くしたよね。ごめん」
「びっくりしたけど、感謝してます。裕さんは私にとって特別な大切な人です。ずっと何でも話せる関係でいられたら嬉しいです」
「僕にとって、雫さんのことも大事やでな。だから、変なとこで泣かせたくはないのです。まぁ、とりあえず、やるべきことは変わらないから。少しずつ、やり取りの間をあけること」
「うん。様子見ながら、少しずつ減らしていく」
「今回みたいに不慮のことがあっても、下手に取り乱すと、相手のペースにはまるだけなので、その時は」
「うん」
「・・・・・・・・」
「深呼吸して俺のブログ見るとか?」
「できないよね…」
「うん…その時は俺が邪魔してあげる」
「どうやって?」
「メッセージくれたら付き合うし、電話したいならしてもいい。とにかく落ち着かないとアカン」
「国際電話、高いよ…」
「LINE電話あるやろ」
「LINE、繋げてくれるの?」
「ナイショやで」
こうして私達はLINEで繋がった。
2019年11月20日の3時半頃。
LINEを繋げたあと、私は寝ることにした。
でもその後、私はAさんのことを想うと涙が止まらなくなり、眠ることができなかった…。